復活!とそとそ5号のCDレビュー
その名もスキゾ・ミュージックCDイントロダクション。

 tosotoso05's Schizo MusicCD introduction

ま、分裂症的にかたっぱしからお気に入りCDを紹介するってことですな。
いやはや。昔に紹介してたやつにやけくそぎみにプラスして
がしがしいろんな作品を追加していきましょう〜ってなことで。
特集にしているとなかなか入れたいCDを入れることが出来ずに混沌と
してましたが、今回はもぅ頭にスキゾって謡っちゃっているんで、なんでもありっす。
アニメから現代音楽、はたまたサントラから民族音楽まで(笑)
これならなんとか更新できそうですばいっ!(何人??)
それにしてもま、あいかわらず売れてなさそうなCDばっかりやねぇ〜。
でもそれを、売れないって解ってるのに一所懸命に製品にしてるところも
あるんだから、よけい笑えるよね。いやっ、いかしてます、素敵ですぞ!
さて、ここで、紹介してるCDをわざわざ買ってきて、つまんないだとか
文句言わないように(笑)そりゃーもう混沌とした気持ちになること請け合いです。
ほな、いってみまひょか!!

ZNR:
Traite De Mecanique Populaire(一般大衆向け機械学概論)
ZNRって聞いてもきっと誰もしらないだろな。えーと、1968年パリ5月革命の騒乱から生まれたジャズロックグループ、バリカードを母体とするおフランスの反社会的?チェンバーロックグループの2枚目。どうです・ジャケかっこいいでしょ?いいでしょ?チープな電子音のアンサンブルものとしか、最初は感じられないが、奇妙な不協和音が耳に残り、しらずしらずのうちに罠にはまってしまう、エキセントリックな秀作。1枚目もそれなりによいですけど、こちらのほうがより、洗練されてるような気がしてます。必聴!!エリック・サティのような甘美かつ奇妙な世界がここには存在する。

AKSAK MABOUL:
Un Peu De L'ame Des Bandits(ならず者のように)
1977年に結成されたベルギーの鬼才マルク・ホランダーのプロジェクト、アクサク・マーブルの2枚目。アバンギャルド・ロックの歴史的名盤。タンゴ、パンク、ロック、トルコ音楽などの様々な音楽がフェイク、引用され巧妙に解体、再構築されることで、独特の無国籍感覚を味わうことができる。とてもソリッドでかっこいいと思うんだけど、でもやっぱりなんか変なんだよなぁ。うまく説明できないけど、そこには混沌とした感じが漂っているんだよね。そういう時代だったのかねぇ、このころのヨーロッパって。わたし、こういうのを「カオス系」と呼んでます(笑)。

HAL WILLNER presents:
Weird Nightmare / meditations on mingus
またまた「カオス系」(笑)。わたしの好きなプロデューサー、ハル・ウィルナーとチャールズ・ミンガスががっちりタッグを組んだまさにナイトメアな1枚。ロビー・ロバートソンやレナード・コーエンがミンガスの自伝:負け犬の下でを朗読したり、ビル・フリーゼル、ドン・バイロン、マイケル・ブレアーなどが参加してたりともう、いたれりつくせり。それだけでも買いなのに、なんちゅうかこの一本筋の通った完成度には、脱帽しちゃいますぜ、まったく。ジャケットはたしか、フェリー二の映画、「アマルコルド」のなかの1シーン。まったくやってくれるよ、ハル兄ぃは。

YASUAKI AHIMIZU:
MADE TO MEASURE Vol.12 / MUSIC FOR COMMERCIALS
ザズー名義のアルバムも出しているレーベル MADE TO MEASUREシリーズの12番目はなぜだか日本の清水靖晃。サキフォネッツで有名な彼ですがこれは個人名義、コムデギャルソンの音楽でこれまた有名なオノセイゲンなんかも参加しています。やってる音楽はというとジャケット通りで、サントリーの烏龍茶のCM曲とかです。「サントリーは烏龍茶のこと」なんていうキャッチコピーが思い出されますが、なんだか他のメーカーから似たようなパッケージの偽物烏龍茶が出まくって当時裁判沙汰の大騒ぎになっていました。私と同じ30代前後の人は必ず見たことがあるはず。懐かしいねぇ。

MARK GOLDENBERG:
L'HOMME A VALISE
(鞄を持った男)
これは正しくはCM曲集というわけではないが80年代?当時あまりにもインパクトが強かったサントリーローヤルCM曲が入っているマークゴールデンバーグの一枚目。ファーブル、ガウディ、ランボー篇と3種類のバージョンがあったが、もちろん3曲ともこのアルバムに収録。サントリーのペンギンズ・バーの曲も彼だそうだ。あの当時のサントリーのCMはどれもすばらしく、ついつい子供でもお酒を飲みたくなってしまうぐらいのパワーを持っていた。ゴールデンバーグの作品は、そのなにかきらきらした輝きと欧州の深く重いイメージを持ち、いまだ私の心の中に刻み込まれている。

TOSHIO NAKAGAWA:
GENIUS TOUCH 天才の感触 Vol.1 / 2 / 3
現代CM音楽のスーパースター、中川俊郎先生のご登場です。JR東海のハックルベリーエクスプレスや、タケダのハイシーL、サントリーの角瓶シリーズなど、そりゃあもう、名作ぞろい。ただメロディが美しいだけじゃなく、どこか耳にひっかかって離れなくなってしまう恐ろしい魔力を持ち得た作品を作り上げてしまうその才能はまさに天才。しかしあらゆる音を効果的にかつ複雑に組み合わせていくようなその手法はどちらかというと、天才というよりは知識と努力の職人肌な人物を想像させるのだが。高級感があって現代音楽っぽい音だなと感じる曲は大抵この人が作っている。

JUN MIYAKE:
CM TRACKS Vol.1 / 2
三宅純先生〜。この人の1作目「星の玉の緒」は、これまた少し上の方でで紹介したハル・ウィルナー先生プロデュースの名作!三宅本人がラブコールを贈り、ハル自身が気に入ってプロデュースをかってでたというのだからその才能も伺えるというもの。その中の曲がセゾンカードのCMで使われていたりしてびっくりしてたものだけれど、実は陰でこんなにもCM曲を作っていたのね。1、2合わせて160曲近くもあるくせに権利上乗せられなかった曲もあるとかでまたびっくり!計2000曲以上だそうだ。先生、あなた仕事しすぎだよ(笑)

MARC RIBOT:
Marc Ribot Plays Solo Guitar Works Frants Casseus
うおおっこりゃいきなりマイナーですなぁ。普通の人は知らないと思うんですが、マーク・リボーという前衛ジャズギタリスト?が、自分のギターの先生であるフランツ先生の曲をベルギーのクレプスキュールというレーベル(おフランスっぽいアンニュイなレーベル)から出したという変なCDです。うーん、やはりこの暗さは、そこはかとなく漂ってくるマイナーな匂いなのでしょうか。聴いてるだけでしんみりしてきます。そもそもFrants Casseusなんて人自体知りませんよねぇ。でもポロポロと鳴るギターは、ちょっと雨の音っぽくて可愛くて寂しげでかつ、儚げ。

ELENI KARAINDROU:
Music For Films
エレニ・カラインドルーという人は知らなくても映画監督のテオ・アンゲロプロスは知ってる人いるんじゃないでしょうか。これは名匠アンゲロプロスの映画「霧の中の風景」や「シテール島への船出」などで使われたカラインドルーのサントラ作品集です。二人とも生まれはギリシャであるにもかかわらず曲や映画の雰囲気が東欧のような重苦しい感じなのはなぜでしょうねぇ。テナーサックスでノルウェー生まれのヤン・ガルパレクが参加しているのですが、それが作品の哀愁感をさらに助けているのではないかとも感じられます。ゆるやかで重い音楽です。

ARTO LIDSAY:
Noon Chill
坂本教授のグートレーベルでの3作目にあたる、アート・リンゼイのネオボッサ。いまやブラジル音楽の一級プロデューサーとなった彼、アンビシャスラバーズのころの刺激的、知的かつ、狂暴で壊れたイメージはそのままに、さらに繊細さと孤独感を増している。好き嫌いはあるだろうが、ニューヨークアンダーグラウンドとブラジル音楽がミクスチャーされた都会人のための音楽。もちろんグートでの1〜2枚目も気に入って愛聴しているが、雨の日に聴くならこれが一番おすすめ。聴いていると、なんだかどんどん醒めてく感じがたまらなく不思議で寂しくそして気持ちいい。

PASCAL COMELADE:
Haikus de pianos
おお、パスカル・コムラード氏のハイク・ド・ピアノの登場です。グランドピアノとトイ(おもちゃの)ピアノの多重録音による自作自演で、トイピアノの吹くと飛んじゃいそうな音色をグランドピアノの低音でなんとか繋ぎ止めているというような摩訶不思議なトーンを持つ作品。そういえばトイピアノの音色って、どこかウクレレに似ているような気がしませんか。可愛いんだけど、どこか切ない音なんです。残音がなくて一生懸命紡がないとすぐ音が切れちゃうところが、その切なさを醸し出しているのかもしれません。両方とも同じように小さいのも、似たもの同士だからですかねぇ?

IVA BITTOVA:
RIVER OF MILK
ジプシーの血を引くと言われているチェコのヴォイスパフォーマー/ヴァイオリニストイヴァ・ビトヴァの91年のアルバム。民族音楽と古典音楽の両方の演奏家だった父親と合唱団の歌手だった母親の間に生まれ、幼少の頃にクラシック・ヴァイオリンを学んだ後、前衛演劇の女優を経て、現在の声とヴァイオリンの表現に到った彼女らしい魅力にあふれた名作。教会での独特の音の反響具合の中、ヴァイオリンと声で静寂と緊張を自在に操るイヴァに立ちあがり早々やられて異次元に連れ込まれるかのように聞き込んでしまいます。実姉イダ・ケラロヴァも音楽家でCDをリリースしているらしいが、そちらは未聴。

MEREDITH MONK AND VOCAL ENSEMBLE:
DO YOU BE
ペルー生まれNY在住のヴォイスパフォーマー・コンポーザー、メレディス・モンクのパフォーマンスアルバム。チープなシンセの音とピアノの反復音に重ねて超絶高音ヴォイスがあるときは震えるように、うねるように、切り裂くように差し込まれて音を紡いでいく奇妙なミニマル風現代音楽。もはや人の声は歌とはならず、ただの音を出すメカニズムの一部として組み込まれ作動しているような錯覚を覚える。これは現代における都会人のためのケチャと言っても過言ではない。

GAVIN BRYARS:
Jesus' Blood Never Failed Me Yet
ミニマリズムとも深く関わっているイギリスの実験音楽家の旗手、ギャヴィン・ブライヤーズの美しき音楽兵器。ある老人が宗教歌「イエスの血は決して私を見捨てたことはない」とぼそぼそっと歌うそのフレーズだけを延々とループさせ、そこにストリングスが静かに絡みながら、すこしずつ変化していくというとてもシンプルな構造を持つこの曲は、ただ1フレーズでありながら、重いヒューマニティと信仰性、そして強烈なビジョンを醸し出している。かろうじて聞こえるほどの小さい音で何度も何度も繰り返し聞いて欲しい名曲。洗脳性あり、注意。

KEITH JARRETT:
DEATH AND FLOWER(生と死の幻想)
JAZZピアニスト、キース・ジャレットがインパルス時代に残した、呪術的なパーカッションのオープニングから始まり、雨のしずくが落ちるようなベースの弦音に、リリカルなキースのピアノが静かに絡んでゆく永遠の傑作。ジャケットもなかなかで、裏も同じ模様なのだがバラまで砂地模様になっていて侵食されているようにも見えるという意味深ぶりである。哀しげな旋律は力強いリズムに引っ張られるように一気に盛り上がり、最後は生命の賛歌のようにも聞こえてくるが、その裏に常に死の香りを漂わせているようにも思えるまさしくこれぞ表裏一体「生と死の幻想」ということか。感服。

ASTOR PIAZZOLLA:
TANGO ZERO HOUR
本来のタンゴファンよりも現代音楽愛好家たちにより再評価されて人気が出た現代アルゼンチン・タンゴの巨匠アストル・ピアソラが熟年期に残したアメリカン・クラーヴェレーベル盤名盤3枚の内の1枚。映画12モンキーズでもピアソラの曲は使用され、TVCMでもヨーヨー・マが「リベルタンゴ」を演奏したおかげで曲は広く認知されたが、自身の演奏モノでも、音質も演奏レベルも多分これが最高ではないかと。異端と地元の人に嫌われても自己を昇華させて構築したとされる、本人にしか到達し得ない緊張感あふれる完成度高い楽曲に一度は酔いしれるべき。それにしても険しい顔したバンドネオン・ジジィですな。最高!

CLARA ROCKMORE:
The Art of the Theremin
人の声のような音を奏でる旧ソビエト連邦生まれの電子楽器テレミン。開発者はレフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士。最初はエーテルフォンとも呼ばれていた。電子楽器としては最も初期のもので、後にムーグシンセサイザーとかに繋がっていく。映画にもなり、おまけに家庭用小型テレミンも発売されてブーム再燃といったところか。にたような音色のフランス製電子楽器オンド・マルトノもあるがこちらは装置が巨大で置き場所にも困るが、テレミンはにょきっと出てる棒に手をかざし、ボリュームつまみで調節するだけという簡単な奏法で音を奏でることが可能だが、思い通りの音を出すのはなかなか困難らしい上に単音しかだせないなど問題もある。このCDで演奏しているのは名奏者クララ・ロックモア。電子音とは思えない不思議で儚げな音色を堪能してほしい。

KLIMPEREI:
Blumenfabrik(花工場)
こんなの薦めると間違って購入した人から苦情がきちゃいそうな(失礼!)変なアルバム。ユニット名義での2ND。なんか子供が二人でピアノをでたらめにがちゃがちゃ弾いてるよな、幼児性無秩序ぶり。技術力感じられず!ぎりぎりの音楽性。でも楽器に初めて触れた時のどきどき感みたいなのを感じられる、妙な吸心力を持った作品。自宅の工房で淡々とこのような曲を作りつづけているこの二人組ユニットは、実は夫婦。クリンペライというユニット名は、ドイツ語でklimpern=ピアノをポロンっと鳴らすという言葉からきてるとか。でもフランス人。なんじゃそりゃ。しばらく聞いているとこのガチャガチャ感、へたれ感って狙いだったのかも?と錯覚し、変な居心地のよさを感じてしまうころには、あなたはすでにクリンペライにとりつかれている!

BADEN POWELL:
three originals
そろそろ、まともなCDを(笑)ボサノヴァ好きなら必ず聴くべき説明しようのないほどの超傑作。バーデンパウエルは白人と黒人の混血で、バイーアアフロ系ブラジル人のルーツを持つだけにどっしりとしてうねるようなリズムの上に精密かつ高速な奏法で聞き手を魅了する、サンバ好きにもボサノヴァ好きにもジャズ好きにも認められる名プレイヤーである。ギタリストとしては当然ながら作曲家としても多くのボサノヴァクラッシックとされる曲を残している。特にシンガー&詩人のヴァニシウス・ジ・モラエスとの共作で知られる宇宙飛行士やコンソラシオン、悲しみと孤独とかが有名で、聴いたことがある方も多いだろう。このアルバムはスリーオリジナルズとして1975年のTRISTEZA ON GUITER、1968年のPOEMA ON GUITER、1975年のAPAIXONADOの3枚をCD2枚にまとめたものだが、若くて張りのあるもっとも全盛期の演奏が楽しめるとして人気が高い。

MICHEL LEGRAND:
Les Demoiselles de Rochefort(ロシュフォールの恋人達)
フランスのミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」のサウンドトラック。たまにはこういうのもお奨めしとかないと変な人と思われるしねぇ。もぅ飽きるほど聴きまくりましたがいまだ飽きない、恐ろしいほどの美しい旋律とコーラス、泣きメロの応酬は天才ミシェル・ルグランの必殺技。これにかなうはずもなく当然おフランス好きの旧オリーブ少女達のマストアイテムと化す(ホントか?)ほどのおしゃれ系名サントラであったことは疑いようもない。ちなみに「シェルブールの雨傘」の曲もミシェル・ルグランである。「〜雨傘」が悲しげな曲が多いのに対し、オープンセットで、ロシュフォールに住む音楽家とダンサーの姉妹の恋物語を生き生きと描くこの映画にふさわしくアップテンポで明るく、また度々リフレインされるせつないテーマ曲との対比で、よりキャラクターを際立たせてすばらしいミュージカル映画に仕立て上げている。やはりミュージカルってのは音楽が大切だにゃぁ。え?あたりまえ?んぐ。

EGBERTO GISMONTI:
DANCA DAS CABECAS(輝く水)
ブラジルの奥地、そこにひっそりとしかし、まさしくきらきらと輝く水面のようなこの作品。アーバングラウンドに急に現れたオアシスのように清涼な空間を演出するのにうってつけな静かだが強い、つややかな大人のための音楽だ。エグベルト・ジスモンチはブラジル、リオデジャネイロ生まれの演奏家。ピアノも弾けば、ギターもショーロも、シタールも弾きフルートも吹く向かうところ敵なし、脅威のマルチプレイヤーだ。共演は天才パーカッショニスト、ナナ・バスコンセロス。ドイツの名門ジャズレーベルECMのプロデューサー、マンフレート・アイヒャーに観とめられ1976年に出された初アルバム。二人の会話のようなアコスティックかつプリミティブなサウンドに酔いしれてほしい。

RICKIE LEE JONES:
POP POP
イリノイ州シカゴ生まれのコンテンポラリー・ポップスのスター、リッキー・リージョーンズの唄う古き良きスタンダード・ナンバー集。決して歌がうまいとは言いがたいが、脱力ニュートラル状態のまま、ゆっくりと立ち上がるその声にやさしく包まれて、後はそのまま身をゆだねていればゆっくりと夢の世界へいざなってくれる、天気のよい昼下がりに聴きたい好アルバム。脇を固めるミュージシャンもなかなかのツワモノ揃い。ベースのチャーリー・ヘイデンに、テナーサックスに、ジョー・ヘンダーソン、バンドネオンにディノ・サルーシとジャズ系の名奏者達が名を連ねている。もちろん抑制の効いた、丁寧な作りで彼女をサポート。最初から最後まで派手さはかけらもないが、ずぅっと長く聴けるやさしい作品に仕上がっているので、ぜひとも愛聴盤にして欲しい1枚。

UEDA MASAKI & ARIYAMA JUNJI:
ぼちぼちいこか
関西ブルースの雄、上田正樹と有山淳司による輝かしき1975年製作、大阪フィーリング満載、傑作ラグタイムブルース?アルバム。上田正樹はこの後、「悲しい色やね」とかで有名になるが、このころからシャウト系しゃがれ声は健在。のちに二人は、自身のバンドのサウス・トゥ・サウス、憂歌団とかに続く日本ブルースの石杖的存在となった。ブルースが、本来人生の悲哀を唄うことを意味するなら、ここにはまさしく若き彼らの輝く青春とその時間、昭和の風といったものを上田ががっちりと、有山はかろやかに刻みこんでいたと言える。泣けるわ、笑えるわ。ま、お金ない〜、金あったらネーちゃんとこ(風俗)いくのに〜ってツインアコギをドライブさせながらマジで唄うアーティストそんなにおらへんって。ちなみにジャケットデザインは、私の師匠、山口克巳氏。

TAKEO YAMASHITA:
LUPIN V 71'ME TRACKS
そろそろ触れておかねばいかんわねぇ。私はこの人の音楽で育ったといっても過言ではない、大好きな作曲家、山下毅雄御大のご登場。実写版ジャイアントロボも、プレイガールも、ガンバの冒険もクイズタイムショックも、みぃんな、プロフェッサーヤマタケのお仕事。赤いジャケットのルパン三世が世間的にはメジャーだが、あれはセカンドシリーズ。音楽担当は大野雄二氏。私と同年代それ以上は、やはりファースト、グリーンジャケットのルパンに思い入れがあるので、CD化を強く望んでいたわけで。実は当時のオリジナルテープが消失、ずっと長いこと聴くことが出来ずに苦渋を舐めるファンがどれほどいたことか。だがMEテープからの再生と言う形でついに実現。キター!!当時スタジオでその場で編曲しながらセッション、たった1日で作り上げられたという脅威のサウンドを堪能せよ。ヴィブラフォンに、クラリネット、スキャットに口笛。何度聴いても思うけど、これってラウンジ系シネジャズ先取りですよねぇ。ちなみに口笛は御大自ら吹いてらっしゃるってことで、すごすぎますっ!ヤマタケ万歳!

HECTOR ZAZOU:
MADE TO MEASURE Vol.5 / GEOGRAPHIES
一番最初に登場した私の大好きなチェンバーロックグループ「ZNR」の主要メンバーの片割れ、エクトール・ザズー名義のMADE TO MESUREレーベルから出た室内楽と声楽のための小品集。この「ジオグラフィズ」はZNRのファースト「バリカード3」に収められていたザズー自身の作品がリメイクされ、又は改題され再収録されている。録音された時期が近いせいかZNR:Traite De Mecanique Populaire(一般大衆向け機械学概論)に音色的に極めて似ている。ここでもザズーらしいエキセントリックな音色は健在。一般大衆向け機械学概論が気に入ったならこちらもぜひ。もう一人の片割れで解散後アルチュールHのデビューアルバムをアレンジしていたジョゼフ・ラカイエについては、もうすこし後で紹介したい。このあと「ジオロジーズ」と呼ばれる続編(MADE TO MESURE vol.20)も出たが、そちらはぼちぼち。

KLIMPEREI & PIERRE BASTIEN:
mecanologie portative(携帯用機械学)
再登場、奇才戯音夫婦クリンペライと、自作の機械仕掛けの自動演奏装置で音を奏でる特異なアーティスト、ピエール・バスティアンがDATをやりとりしながら、両者が音を加えて完成させたという、不思議性音楽マニア狂喜乱舞間違いなしの必聴盤。機械偏愛者バスティアンは、手法的にはかなり実験色の強いにもかかわらず音自身はどちらかというと不思議なゆるやかさを含んでいて、いわゆる機械性は感じられない。その彼のヒューマニティックな「メカニウム」トラックにクリンペライがスパイスをふりかけたことで、聴きやすくチャーミングな、しかしどこか、ひっかかったトゲが傷口から体内に入り込んでいくような摩訶不思議なサウンドが構築されている。ZNRにもどこか似ているような気が。アルバムとしてもバランスよく完成度も高い。お勧め。

Ritual beating system:
bahia black
同時期に出たセルジオ・メンデスの「Brasileiro」と結託して?ブラジル音楽の未来を決めた1999年のフルパワーアルバム。プロデュース=ビル・ラズウェル、フューチャリング=ハービー・ハンコック&ウェイン・ショーター。もともとマテリアルというバンドのファンクベーシストだったビル・ラズウェルはハービー・ハンコックのアルバム「フューチャー・ショック」のプロデュースでその名を一躍有名にする。その後も様々な音楽と係わり合いを持ちながらパワーアップを繰り返し、研ぎ澄まされたその感性は、このアルバムでついにブラジル音楽との融合を果たすことになった! まずブラジル音楽の重要拠点とされるバイーア地方出身のカリニョース・ブラウンがパーカッション、ギター、ヴォーカルで全面参加していることを特筆しておきたい。 自身のアルバムや、打楽器集団timbaladaのプロデュースなどこの後の大活躍を考えると奇跡のような出来事だ。彼の打ち出すサンバ・ヘギと言われる重いビートのリズムにハービーのピアノ、ショーターのソプラノサックスが軽やか絡み、美しくも激しいブラジルストリートミュージックの新流を作り上げることに成功した。

METROPOLIS:
turtle island string quartet
普段、癒されたいなんて思っていない私は、あまりウインダムヒルレーベルにお世話になることはないのだが、ダロル・アンガーの作品だけは別だ。バーバラ・ヒグビーと組んだ「タイドライン」はなかなかの良作で、今でもお気に入りの一つでもある。 さて、そのアンガー率いるジャズを演奏する弦楽四重奏団がこのタートルアイランドストリングカルテットだ。他にクロノス・カルテットなどクラッシックとは違うジャンルを演奏するアーティストは多いが、クロノスがその後ワールドミュージックとの融合を経て現代音楽のジャンルにもどっていったのに対し、難しくなく楽しく、親しみやすい選曲で人気を博したカルテットだ。本作「メトロポリス」が亀島弦楽四重奏団名義のファーストアルバムで、その後2作&ベストセレクションが出てる中でもやはり本作が一番すばらしい。現在活躍があまり聞かれないのが寂しい限りだが、ぜひパワーアップして戻ってきてもらいたいものである。ホンダアコードのCMで昔使われた、リー・モーガンの「サイドワインダー」弦楽四重バージョンもこのアルバムに収められている。聴いたことある人も多いのでは?

La Marie en Septembre=九月のマリー:
夏木マリ
野宮マキの入った以降のピチカートファイブなんてどーでもいいと思っていた私ではありますが、小西康陽氏の知識量と演出力、妖女優・夏木マリのアンニュイ具合のトリプルパンチで軽くノックアウトされてしまいました。1995年発売にもかかわらず、それ以来ずーっとずーっと聴いてますぜ、いやはやまったく。元ネタは阿久悠作詞・都倉俊一作曲・ペドロ&カプリシャス唄の「五番街のマリーへ」ですな?!ボサノバ+シャンソン風の曲調と、「恋に疲れた女のボヤキ」にも似た歌い方&歌詞で、往年のフランス映画のワンシーンのような雰囲気を構築している。〜古い歌がラジオから、不意に流れるの。昔いつも聞いていた憂鬱なブルース。あの頃私は今よりずっと若くて泣き虫。あんなに恋していたのにいつも悲しくて泣いた。むかし私が愛した人、本当に愛してた〜とまぁこんな具合。せつないねぇ(笑)。遊べる本屋「ビレッジバンガード」ではいまだにけっこう売れ続けているらしい。解る解る!ながーく聴き続けていたい完成度の高い愛聴盤ですぞ。すんばらしいです。夏木のねぇーさーんっ、愛してましゅ!!

Comme Des Garcons Volume1+2:
SEIGEN ONO
音楽プロデューサー、録音エンジニア、作曲家、そして自ら演奏しライブもこなす、オノセイゲンが、1987〜88年「コムデギャルソン」川久保玲からの依頼で作ったショウのための音楽集。アート・リンゼイ、ビル・フリゼール、ジョン・ゾーンら、NYダウンタウン・シーンの著名な精鋭たちが結集しており、「洋服が奇麗に見えるような音楽」という難しいコンセプトに恥じない楽曲を作り上げた。軽すぎず、重過ぎない、そして時代に左右されない揺ぎ無い完成度。粒が立っていながら、ふかっとしている、まるでお米のような音楽!(「日本人としてのの生活になくてはならない」というような、よい意味に解釈していただきたい)。再度聴きなおしていて、以前ブルーノート東京でのライブでの、その緊張感のある音に圧倒されたのを思い出した。おそらく氏は自分にも他人にも厳しい人なのだろう。のちにアート・リンゼイによるリミックス盤も発売されているがそちらは未聴。

AO VIVO NO RIO 1&2:
JORGE BEN JOR
セルジオ・メンデスが世界的にヒットさせた名曲「マシュ・ケ・ナダ」の生みの親、ブラジリアン・ポップ・ファンクの帝王。当時人気だったフュージョンギタリストのジョージ・ベンソン(Geoge Benson)と間違われて名前をジョルジ・ベンからジョルジ・ベンジオールへと改名した経緯をもつ不遇の男でもある。私もレコード屋に間違えて教えられて、買って聴いてからなんか違うなぁなんて思ったこともあるのでこの件に関しては笑えませんが(当時ラジオしか情報源がなく、容姿とか国とかジャンルとかまったく解っていませんでした:笑)。とにかくそんな、生きたまま伝説になっている彼のエネルギーすべてが注ぎ込まれたといっても過言ではない熟年期傑作ハイパーライブアルバム2枚組。最近のアルバムは少しエネルギー不足な気がしてるのは私だけ?ジョルジ、お前はホントはそんなじゃないはずだ。このアルバムを、ジルベルト・ジルとの競作「ブラジリアン・ホット・デュオ」を思い出せ。そして我々は聴くしかないのだ、狂え!そして腰をくねらせろ!!

Always Say Goodbye:
CHARLIE HADEN quartet west
どしてブラジリアンファンクの後に、ジャズなんじゃ〜だって?細かいことは気にしない、気にしない。並びなんて考えてないからね。さて、ジャズベーシスト、チャーリーヘイデン率いるクァルテット・ウェスト名義の、「ハードボイルド映画サウンドトラック風」がコンセプトの名企画アルバムの登場だ。古いクライム(=犯罪)サスペンスものや探偵が出てくるハードボイルド映画から、ジャズを好きになった人も多いと思うが、ヘイデン自身大好きな探偵小説家レイモンド・チャンドラーからインスパイアされてこのアルバムがつくられているだけに、さすが期待を裏切らない出来で ある。最初にワーナー映画で使われるタイトルファンファーレが鳴るだけで同時にざーっと全身鳥肌が立ち、1946年公開の「大いなる眠り」劇中のセリフ挿入後メロディが奏でられはじめる頃には、もぅすっかり主役の探偵にでもなったつもりで、煙草を燻らせたくなるほどなのだ。音楽の力というものを強く感じるアルバム。こういった作品は意外に多くない。さぁ、こいつを聴いて、あなたも今日からフィリップ・マーロゥだ!

Melancholia:
matia bazar
またまた毛色を変えて、今度はイタリアのプログレバンドを前身に持つドラマティック・エレクトロ・テクノポップバンド、マティア・バザールを紹介してみましょう。え?こういうのも聞くのか?そーなんですよ、なんでも聴きますよ、ふはは(開き直り?)。とにかくカセットテープ(古っ!)がちぎれるほど聴きましたからねぇ。このバンド現在もマティアバザール名義で精力的に活動中ですが、かなりのメンバーチェンジを繰り返していて、やはり私が好きなのはボーカル=アントネッラ・ルッジェーロが在籍していたころ(1975〜89)ですね。当時日本でもAGFマキシムのコマーシャル(1983?)=水門橋をゆっくり船が進んでゆく横で?コーヒーを飲むCMの曲(=愛のブルー・トレイン)、日本生命ナイスデイCM曲(=スーヴニール)やノエビア化粧品CM曲(=失われた島)に三菱ギャランCM曲(=郷愁の星)と、実は結構使われています。音的には今聞くと少々古さを感じなくもないですが、アンジェラの声が時代を超えた圧倒的な高みへとこのバンドを押し上げています。これは1986年発売、円熟期のアルバムでここから上記CMに3曲も使われていたりして。ちなみに「愛のブルートレイン」は1982年?発売の「..Berlino..Parisi..Londra 」というアルバムの日本編集版か、BEST盤にしかはいってないらしいです。

the texas trumpets:
the texas trumpets featuring the eastside band
@12歳でトランペットを初めエタ・ジェームズなどのツアーに参加しトランペッターとして引っぱりだこのドナルド "ダック" ジェニングスに、Aデューク・エリントンやレイ・チャールズ、ジェームズ・ブラウンやカウント・ベイシーなど超著名な奏者との共演歴も多いマーティン・バンクス。Bハンク・バラードやオーティス・レディングなどとプレイし、一流のプレイヤーとして知られるようになったパット・パターソン、Cそしてテキサスのジャズ・シーンに突風のごとく現れたダラス出身の新人イーフレイム・オウェンスの、必殺トランペット奏者4人で編成されたオースティンを拠点に活動するモダン・テキサス・ブルースバンド「テキサス・トランペッツ」のファースト1999年録音。テキサスならではの、古臭いながらも小気味よく、「いっちょいったれー!」とばかりのグルーブ感ブリバリファンキ−路線一直線ぶりに、始まってそぅそぅノックアウト!!「60年代のインスト・ソウルとソウル・ジャズをかけ合わせたようなこの感じは聴く度にどんどん良くなる!」とピーター・バラカン氏も超ご推薦だ!傑作!

Laughing in Rhythm the best of the verve years:
slim gaillard
ジャズ&ブルースmeetsユーモア、音楽におけるウィット。20世紀前〜中頃人気を博した、娯楽請負人スリム・ゲイラードが奏でる音楽にはとにかくゆるやか解りやすく、そして親しみやすい。スウィングジャズとR&Bを原型に持つJIVEと呼ばれるこのスタイル、学問化+複雑化したジャズに置き去りにされた悲しい過去を持つが、その後ジャズが次第に解体されてゆくのに対し、そんなのお構いなしで今も脈々と受け継がれている。理由は、文句なく楽しい音楽だからだ。その一時代を築いたのがスリム・ゲイラードというわけだが、曲を簡単に説明すると、ドナルドダックたちがガァガァいってるだけのような有名曲「チキン・リズム」に、犬にこっちにおいで〜ワンワンワゥーン!なんていってると最後にたくさんの犬が集まってきてしまう曲「セレナーデ・トゥ・ア・プードル」なんて曲、日本語でゴメンナサ〜イ、オハヨー!と唄っている名曲「ゴメンナサイ」などなど。どれも風刺とユーモアに満ちていてすばらしい。このCDは名門ヴァーブレーベルに残されていたEPの音源などを集めたベスト盤。ジャケイラストは私も大好きなデビッド・ストーン・マーティン。

Polyhony of
the deep rain forest:
music of the Ituri Pygmies
今度はワールド・ミュージック。現地録音された、いままで神秘のベールに包まれていた世界中の脅威的な音楽水準をまざまざとみせつける傑作音源集JVCワールドサウンズシリーズ第15弾。これを読んでいるあなたがCDコーナーでこれを見つけたなら民族音楽にあまり興味がなくとも必ず買うべきマスターピース。アフリカ大陸の中心部、熱帯雨林地帯の広大な密林イテゥリの森北東部に住むピグミー族の声々が、虫や鳥の声と相まって森中と共振して奏でられた、透明かつ神々しいポリフォニーにきっと驚くに違いない。まず音頭取りがこの歌を歌おうと1小節を歌って提唱、それに気が合った仲間が呼応し、次々と声が織り重なってゆく様は、いつ聴いても新鮮な 感動と新しい発見を聴く人に与えてくれる。実はコンクリートジャングルを密林に一瞬にして変貌させるワープミュージックでもある。都会に暮らして時間に追われている人ほど、こういった音楽を本当は必要としているのかもしれない。

てな具合にとりあえずどどっと紹介しましたがいかがでしたか。
これらのCD、なかなか購入するには至らないとは思います。でも、縁というものかもしれませんが、今聴いとかないと一生のうちに二度と出会えない音楽もあるわけですよ。(実際ここの作品は多くが廃盤になってたりもします。)それが自分自身にとってひょっとして必要な音楽だとしたら?新しい「出会い」や「波」を運ぶ音かもしれない何かを求めて、私はCDを購入し続けるわけですな。(ま、大義名分ですけどね。)
それにしても、変なとりあわせ。いったいtosotoso05ってどんな趣味なんじゃい?と自分でも疑いたくなるほどのスキゾぶり(笑)え?狙ってるだろって?違いますってば。いや、マジで。

音はあらゆるところに転がっています。オーケストラの演奏前・最初の音合わせの時。あの音が重なっていく感じとかどきどきしませんか?鼻歌を歌って歩いていると、ふと踏み切りの音が絶妙のタイミングであわさった時。してやったりとか思いません?寝ていると風がふいて裏の竹林がざわざわ。胸が高鳴りませんか?音楽=音を楽しむってのはそういうことな気がします。
これらの作品はもちろん偶然のものではなく、作為的に奏でられた音ではありますが、ただの決まりごとだけでは収まらない、それは時には抗ったり、足したり引いたり、あるいは否定したりと様々な方法で組み立てられたパズル、あるいはきらきらとした魅力に満ちているようでいてどこかその性からぬけだせない人そのものとの出会いのように私には聴き得られるわけです。ちょっとオーバーすぎましたかね?すいません。

さて、登場すべきCDはまだまだあるわけなんすけど、コメント書くのがなかなか大変で。ま、なんかみっけたらまた書きためて更新いたしますです。ではでは。